昨日、ジェノタイピングのために、テクニシャンとともに実験ネズミの尻尾切りを行っている合間、ネズミが飛びついて、自分の指を噛んだ。
咄嗟の出来事で、めちゃくちゃ焦ったが、ネズミは噛みついたまま、全く自分の指から離れようとせずに、15秒くらい、ずっと噛み付いていた。
その後、なんとか指から離れてくれ、テクニシャンの指示のもと、イソジンみたいな液体で、ゴシゴシ指を洗って、絆創膏を巻いて、尻尾切りを再開した。マウスのジェノタイピングを先延ばしにしまくっていたため、56匹もマウスがたまっていたから、途中で抜けるわけにはいかなかった。
その後、1時間くらい経過するうちに、みるみる指が腫れ上がった。蜂に刺された時みたいだった。
おそらく、マウスの唾液が体内に入って、免疫反応を起こしたのだろう。病院に行こうかと考えたが、体調は問題なさそうだったので、とりあえず様子見することにした。
次の日にはだいぶ腫れが引いていて、問題なさそうだった。でも、まだ痛くて、お風呂に入ると、指が異様にヒリヒリするので、左手をお湯につけることができない。
マウスを扱い始めて3年以上になるが、噛まれたのはこれが初めてだ。今まで実験のために、数百匹以上を犠牲にしてきたから、その報復なのかもしれない。
この遺伝子組み換えマウスを使ったプロジェクトは、自分の発案ではなく、前任者の引き継ぎなのであるが、その前任者はラボを離れ、自分がしょうがなく引き継いでいる。はっきり言って、このプロジェクトは失敗なのだが、一応論文としてまとめなくてはならず、一生懸命実験しているわけだが、大したプロジェクトでないにも関わらず、異様に時間がかかってしまう。本当にいいことなしだ。
正直自分はこの遺伝子組み換えマウスを作成するべきではなかったと思っている。どうしてもマウスを使わなければならない状況でもなかったし、IFを上げるために、興味本位で作成された感じだ。そういう「なんとなく、ノリで」遺伝子組み替えマウスを作成した場合、たいてい、面白い表現型は得られずに、時間とお金だけが浪費されている。
最近は、ボスも「気軽な気持ちで遺伝子組み替えマウスを作るのよくないよなあ」ということを言っていて、自分もそれに賛同している。マウスの実験は手間がかかるし、結果が芳しくなかった場合でも、まとめるのに時間がかかる。何より、マウスの命を犠牲にしなければならない。
そんな感じで、ネズミに噛まれた指の痛みを感じながら、昨今の研究状況を省みる週末であった。