わたしは論文アレルギー

先日、カウンセリングに行った。久々のカウンセリングで、最近考えていたことを色々まとめられた、いいセッションだったと思う。

最近はうつ病になってから著しく機能が低下していた「興味・関心」の脳機能が上向きになってきたことを話した。うつ病になってから極端になった「新しいものが怖い」という感情が低下して、「あれなんだろう、これなんだろう?」と新しい色々なものに関心が”自然に“湧き始めて、なおかつそれを実行に移す行動力も伴ってきているように思う。

改めて、自分で自分の脳の状態をコントロールすることは不可能だなと思った。つまり「無理矢理に興味関心を脳に抱かせることはできない」ということだ。これに関してはまた個別にまとめられたらなと思う。

最近は以前の「敗北を受け入れる勇気シリーズ」でもまとめたように、今後のキャリアについて考えなければならない時が来て、それに応じて自分のうつ病というものを改めて見直す機会が増えた。

アメリカに来てから自分が自覚していたこととして「新しい研究論文が読めなくなった」ということが挙げられる。日本にいた頃はジャーナルクラブがあって、必然的に新しい論文に目を通さなくてはならなかったのだが、今の研究室ではジャーナルクラブがなく、自分から紹介用の論文を探しに行く必要がなくなった。

留学初期の数年は、メンタルヘルス関連の本の読書がやめられなくなり、2-3年で150冊近くの日本語の本を読んだ。本当に暇さえあれば本を読んでいる感じで、自分の脳がスポンジになったみたいに、活字が頭に入ってきた。「せっかく留学しているのに、日本語の本ばかり読んでいる」みたいな勿体無さもずっと感じていたが、それを自覚しながらも読書をやめることができなかった。

だから必然的に論文を読む時間も減り、そして習慣もなくなってしまったが「あんなにつらいことがあったのだから」と、その状況を自分でも納得していた。「今は論文を読まなくてもいい」と。

ところが、その「猛烈な読書期」も終わりを告げ、時間的な余裕ができても、自分が再び新しい論文に向かい合うことはなかった。

もちろん、仕事を進める上で、多少論文に目を通さなくてはならず、そういう「実験を進める上で必要な論文」を読むことはできるのだが、「最前線の科学」という意味合いの、最新の論文を自分から調べる習慣が、「猛烈な読書期」の後も、そしてうつ病がある程度寛解してからも、回復しなかったのだ。

最近になってようやく気づくことができたのだが、自分は「論文アレルギー」あるいは「研究アレルギー」になってしまったのだ。自分がうつ病になった原因は、研究でのハードワークが8割ほどを占めていて、研究そのものにトラウマ的な恐怖心が付着してしまっている。自分の脳の潜在的な無意識的な部分で「研究=ネガティブ」「論文=怖いもの」というふうに認識されてしまっているのだ。

敗北を受け入れる勇気シリーズ」でもまとめたように、自分は前の研究室のことに触れるだけで、食事が喉を通らなくなったり、心臓がバクバクして眠れなくなったりするなどの身体症状が出てしまう。うつ病というのも確かにそうだが、それに加えてパニック障害的な部分も、自分のうつ病には含まれているのかなと思った。実際に、うつ病とパニック障害というのは併発しやすいらしい。

パニック障害とうつ病は併発しやすい?2つの病気の関係について

自分は「うつ病・プチパニック」を抱くようになってから、しょっちゅう研究室を離れて、散歩に行くようになった。その習慣はアメリカに来てから、職場に問題がなくなった後も、現在まで続いている。

ずっと研究室にいると、息が詰まる気がして、外の空気を吸いたくなってしまうのだ。雨だろうが雪だろうが、真冬の極寒だろうが、真夏の灼熱だろうが、自分は日中2~30分くらい、職場を離れて散歩をしている。

平日の職務時間は研究できるが、それ以外の時間では全く研究に向き合わなくなった。興味関心が薄れた、あるいは興味関心が他に向いた、ということもあると思うが、それ以上に「研究に対する漠然とした恐怖心・嫌悪感」が自分を研究から遠ざけているように思う。少しまとめると

  • うつ病初期から「猛烈な読書」ができていて、全ての脳機能が低下していたわけではなかった。
  • 典型的なうつ病の症状に加えて、研究にまつわるものへの「プチパニック」がみられた。
  • うつ病の典型的な症状が寛解してきても、プチパニックの改善はあまりみられなかった。

という感じである。なんとなく「新型うつ病」と呼ばれるものにも似ているなと感じた。仕事や勉強はできないけど、遊ぶことはできて、周囲から「甘えてる、怠けてる」と誤解されやすい症状だ。今の自分がまさにそんな感じで、うつ病が寛解してきて、多くのことが普通の人と同じくらいにできるようになったけど、研究に対して、特に日本の研究に対してのプチパニックだけが改善されない。

ちょっと調べてみると、新型うつとパニックもまた併発しやすいらしい。自分そっくりである。

パニック障害の患者さんに多い「非定型うつ病」うつ病と逆の症状が特徴です

非定型・新型うつ病

パニック障害+非定型うつ病に注意

そういうことをカウンセラーさんに話してみたら「うつなまさんは研究やMちゃんみたいに、”特定の原因”があってうつ病になりましたもんね」と納得してもらえた。

4年以上、長く自分のうつ病に向き合って、ようやく見つかる視点もあるものだ。もっと早く気づきたかったけど、そう簡単ではない。

さて、それがわかった上で、今後どうやって自分と向き合っていこうか…

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