先日友人の送別会がありました。コロナがまだ流行っている中、メリーランドからシカゴへのお引っ越しだそうで、大変ではありますが、次の地への希望も大いに抱いているようでした。そんな中、送別会に参加していたドイツ人から留学に関する印象的な話を聞いたので、ブログに記録しておこうと思います。
研究留学の岐路。帰国 or ビザ切り替え or 永住
海外留学も複数年が過ぎると、次の選択の帰路に立たされます。多くの日本人研究者はビザを保有して海外留学しますが、そのビザには”最大期限“というものがあります。例えば自分が保有しているJ1ビザの場合、1~2年の期限のものが発行されるのですが、これはあくまで一時的な期限であり、更新ということが可能です。しかし、その更新にも限りがあり、J1ビザの場合、基本的には最大5年間ということになります。もし、5年以上アメリカで研究をしたい場合は、ビザを更新ではなく、H1BビザやOビザなどに切り替える必要があります。場合によってはグリーンカードの申請も可能になります。ビザの更新は比較的簡単なのですが、ビザの切り替えは難易度が高めになっています。そして、「永住」つまり「日本国籍を捨てて、アメリカ国籍を取得する(市民権の取得)」という最大の選択を取る人もいます。グリーンカードの取得と市民権の取得は似ているようで全然違います。
なので、ほぼ全ての日本人研究者が、研究留学を3年過ぎたあたりから、これらの選択の帰路に立たされるのです。
自分もこの点に関してかなり迷っているのですが、ラボの状態やボスの意向もあり、J1ビザが満了すると同時に帰ることになりそうです。必死にアメリカ国内で研究職のポジションを探せば、もっと長く残ることも可能だとは思うのですが、そこはイマイチ気乗りしない感じですね。
アメリカという国は数年居住するにはベストな国だと思います。最初の数年はアメリカの全てが新鮮です。特に自分が置かれている労働環境は日本と比べ物にならないほど良いです。ボスに夜遅くまで働らくことを強要されることもないし、雑用もほとんどないので研究だけをやっていれば良いし、ボスを交えた飲み会もないので、行きたくもない飲み会に参加して上司の説教を受けるという苦行も、ここ数年一切経験していません。給料も十分もらえていて、研究資金も潤沢で、研究者にとってこれ以上の労働環境はないと言っても過言じゃないと思います。
それでもやはり永住はしたくないなと思うのです。
この話をそのドイツ人の友人にすると、「それはどこの国も同じさ。どこの国に行っても、2~3年いるのはいいけど、永住はしたくないって感じるんだ。どこの国に行っても一長一短だ。それは君がドイツに留学してもそう感じるさ。」と言われたのです。個人的にはヨーロッパの労働及び生活環境がベストだと思っていたので、まさかドイツ人からそういうことを言われるとは思っていませんでした。その友人が言うには「ドイツは研究者の給料が安過ぎる」とのことでした。
全ての研究室がそうではありませんが、割合で考えると日本の研究室よりアメリカの研究室の方が圧倒的に労働環境は良いです。(アメリカにもダメ研究室はそれなりに存在しています。そして運悪くダメ研究室に配属されてしまった日本人もたくさん知っています。)しかし、それでも永住は考えられない。日本語は通じないし、英語はなかなか伸びないし、交通は不便だし、日本への渡航費も高いし、外食もあまり美味しくないし、家族もいないし、友達も少ないし、銭湯も温泉もないし、とにかくとにかく居住という点を考えると、自分にとっては日本に勝る国はないのです。英語は上達したいけど、日本語を捨てて一生英語で暮らしたいか?と聞かれると、やはりノーになると思います。
だから、全ての国が相対的に一長一短なのです。その意味で、数年間海外に居住するというのは人生における最高クラスの贅沢だと思います。そして人生のある時期に、心を決めて、その国のネガティブな側面も受け入れなくてはならないのだと思います。自分も今、過酷な日本の労働条件をどう生き抜いて行こうか、作戦を練っている最中です。