スプラトゥーン3とルミネーション(思考反芻)

最近は研究者としてのNIHでの任期が迫ってきていることから、将来への不安をいつまでも反芻(ルミネーション)してしまうことが多い。

ルミネーションは自分がカウンセリングで習った単語で、特にネガティブな同じ内容の事柄を、延々とループして考え続けてしまうことである。

ルミネーションは自動思考であり、自分で意識してコントロールできるものではなく、脳が勝手に自動的に考えてしまうものである。

ルミネーションという単語を習ってからは「あ、今の自分ルミネーションしている」と気づくことはできるようになった。しかし、気付いたからといって簡単に止められるものではない、というのがルミネーションの非常に厄介な点である。自分に向き合えば向き合うほど、メンタルヘルスを学習すればするほど、人間の脳、自分の脳というのが、いかに自分でコントロールするのが難しいかということを、まざまざと実感させられる。

最近は、昔の研究室での出来事や、「前の研究室に戻ったら、一体どうなってしまうんだろう?」ということを、起床時や就寝前などに、脳が勝手に考えてしまうことが多い。せっかくの貴重な自分の人生を、戻れない過去や、起こるはずもない未来、また自分が嫌いな人間のことを考えるために使うというのは、大変もったいなく、残念だが、わかっていながらも、それらをルミネーションしてしまうことに失望し、ルミネーションを止めることを諦めていた。

「何か他のことをする」というのが、ルミネーションを防ぐために最も重要なことであると、自分は考えている。なぜなら、幸い人間は一度に二つ以上のことを同時に考えられないので、その性質を利用して、他のことに集中することで、したくないルミネーションをある程度は防ぐことができる。

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先日、思い切って休みをもらって旅行してみた。ある程度はルミネーション抑制に効果があったと思うが、時間があるとついつい前の研究室のことを考えてしまう自分がいた。旅行とかハイキングとか、脳が考える時間が多い娯楽は少しルミネーションの抑制に繋がりにくいのかもしれない(それでも、何もしないよりは、ルミネーション時間を減らせると思うが)。

そんな中、先日なんの気なしに、積みゲーと化していた「スプラトゥーン3」を初めてみた。新しいことを始めるのが苦手な(おそらくうつ病の症状でもある)自分は、スプラ以外にも「買っただけでやっていないゲーム」というのが複数ある。

いくらテレビゲームといえど、仕事から帰ってきて疲れている状態で「やり方のわからないもの」というのは中々チャレンジできない。毎回、「今日こそはやってみよう」と思っても、結局やり慣れたスマブラを始めてしまう自分がいた。スマブラは何も考えずに脳死状態でもできてしまい、疲れている自分には、何も考えずにできるスマブラというのが心地よかった。

そんなこんなで自分はスマブラを、発売されてから4年で、3500時間もプレーしている。どうぞ引いてくれ。スマブラだけで、一日2時間半近くプレーしているのだ。

話は脱線するが、スマブラに3500時間費やした経験から、最近自分はその気になれば、例えばプログラミングとかピアノとか、そういうやったことがなくて難しそうなものでも、30代半ばという今からでも一から学べるんじゃないかと考えるようになってきた。人間は4年間で3500時間という膨大な時間を捻出できるのだ。3500時間もあれば、ピアノだってプログラミングだって、ある程度はできるようになるんじゃないかと思う。

話を戻そう。最初は始めるのが億劫だったスプラだが、何時間かやっているうちにルールが分かり、早速オンラインに潜るようになった。それで、実際にオンライン上のメンバーで対戦を始めるわけだが、あまりの面白さにすぐに虜になり、熱中して何時間もプレーし続けた。

するとどうだろう。今まで暇さえあれば前の研究室のことや将来の不安をルミネーションしていた自分が、スプラトゥーンの事ばかりルミネーションするようになったのだ。眠りにつく前、起床後、イカちゃんがローラーでインクを塗りたくる様子が、自然と頭に浮かんでくるようになってきた。

普通の人だったら、この現象を鬱陶しいと思うかもしれないが、トラウマ持ちの自分にとってこれほどありがたいことはない。前の研究室以外のことを考えたくても、どうしてもルミネーションしてしまう自分にとって、ルミネーションの内容が「研究以外の無害なもの、どうでもいいもの」に置き換わってくれるほどありがたいことはないのである。

そういえば、スマブラを最初に始めた時も、バイオハザードを始めた時もそういう現象が自分に起きたなということを思い出した。その頃は今ほどルミネーションに苦しんではいなかったが、ゲームにずいぶん助けられたことを、過去のブログにも書いてある。

最近はスマブラをやりすぎて、以前のように興奮してやめられないということがなくなったせいで、スマブラのことをルミネーションしてしまうことはほとんどなくなったが、他のゲームではそういうことが可能であるということだ。

スプラトゥーンにも飽きればルミネーションが起こらなくなってしまうと思うが、飽きるまでのしばらくの間、スプラでルミネーションを起こして、過去のトラウマから逃避してみようと思う。

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