うつ病の時に性欲が減退するというのは本当か?
今回はうつ病時に性欲は減退するかということに関して、個人的な経験を書きたいと思います。
この記事を書こうと思ったのは、一般的によく言われる「うつ病時には性欲が減退する」という事と若干違った体験を自分がしているからです。そして、性欲という非常に大切なことにもかかわらず、性のことは話題にしづらいためか、どの本を読んでも「うつ病時には性欲が減退する」以上のことはなかなか書かれていません。
やびーさんによると、中には性欲が亢進してしまう人もいるようですが、自分はまたこれとも少し違う気がするのです。
そもそも、男性にとって「性欲」って単語一つで表される程、単純な物なのだろうか?というのも自分の最近の疑問であります。
そこで、この記事では、「うつ病時に自分の性欲がどうなったか?」ということについて、少し踏み込んで書いてみようと思います。語られづらい、個人的な性のデータをネット上に落としておこうという魂胆であります。
うつ病になっても治らなかった「疲れマラ」
AV男優のしみけんさんの動画を観て知ったのですが、研究室に配属され、実質的に労働が始まった20代前半から、自分は長期的な「疲れマラ」という状態にあったようです。
どれくらいの男性が経験するのかはわかりませんが、こういう言葉が存在するということは、そこまで少数派でもないと思われます。仕事で肉体的には疲れ切っているのに、性欲がなぜか亢進してしまうという男性の生理現象です。
当時所属していた研究室はハードワークを強いられる所で、毎日朝から夜遅くまで研究室にいなければなりませんでした。そして帰宅後、疲弊して早く寝た方がいいと頭では分かっているのに自慰行為をしないと落ち着かず、行為後ようやく布団に入るという状態が週7日間毎日続くようになりました。
それ以前はせいぜい週に2、3回くらいしか自慰行為をしていなくて、それは決して我慢してその回数に抑えているという訳でもありませんでした。だから忙しくなったにも関わらず自慰行為が倍近く増えるという現象は自分でも印象的でした。感覚的なことなので完璧には説明できませんが、神経が昂って自慰行為をしないと眠れないような状態なのですよね。
そして、体と心を労わることなく研究室でのハードワークに身を注げた結果、朝起きれなくなり、歯磨きもできなくなり、目覚めは強烈な希死念慮と共に始まり、週の初めはとてつもない絶望感と焦燥感に襲われるようになりました。その他にも大小さまざまなうつ病の症状に苛まれていたのですが、当時は自分がうつ病であるということには気づかず、それに気づいたのは数年後、米国でカウンセリング に通い出してからのことです。
しかし、そんな精神的にも肉体的にも最悪な状態にも関わらず、自慰行為の回数は全く減らず、むしろ20%くらい増えたような状態だったのです。うつ病を患って5年近く経ちますが、体調は徐々に回復しているものの、自慰行為つまり「疲れマラ」の状態は依然として続いています。
うつ病になってから女性に声をかけられなくなってしまった
一方で、うつ病になってから、全く女性に声をかけられなくなってしまいました。女性を誘うことが性欲の部類に入るかは、人によって意見の割れる所だと思いますが、自分は性欲というものが正しく働くからこそ、男性は女性を誘えるのだと思います。
自分の恋愛経験は脆弱で、いわゆる素人童貞なのですが、それでもうつ病になる前は自分から女性を食事に誘ったり、友達と一緒に街コンに行ったりすることが、特に何も意識することなくできていたのです。
それがうつ病発症以後、女性と出会おうという気が全く起こらなくなってしまいました。自慰行為は毎日していたので、いわゆる「性欲の減退」とも言い難いのですが、でもそれはあくまで「射精欲」であり、その欲求が女性を求める気持ちに結びつかなくなってしまったのです。
「うつ病になって自信がなくなった」と言えるかもしれませんが、やはりこれも違う気がします。というのも、うつ病以前も自信なんてありませんでしたし、自分の見た目へのコンプレックスはうつ病発症以前からずっと抱えていたし、うつ病になって見た目が悪くなったわけでもありませんでした。
なんというか、うつ病発症を機に「新しいことに挑戦すること」が非常に恐ろしく、億劫なものになってしまったのです。うつ病になってから、一度だけ女性の方から声をかけてもらったことがあるのですが、その時もなぜか断ってしまいました。その後の展開に飛び込むのが怖くて億劫だったのです。結構可愛らしい方だったので、うつ病が治りかけている今となっては大いに後悔しています。
今はうつ病寛解途中なので、あの頃の感覚を文章化するのは非常に難しいのですが、「怖い」という言葉が結局一番適切かなと思います。「断られること」もそうですが、「万一OKをもらえた場合」も怖いのです。OKをもらえた場合に待ち受けている、その後の未知なる展開に飛び込む勇気がなくなってしまっている状態でした。女性関係に限らず、うつ病がひどい時は、とにかく新しいことや展開が予測できないことに飛び込むことがほぼ無可能でした。
つまり自分はうつ病がひどい時に、「疲れマラ」状態で毎日自慰行為をしないと眠れないが、女性に声をかけるのが恐ろしいという、「性欲が減退する」と言えるのか言えないのか、よくわからない状態になっていたのです。
そもそも「男の性欲」とは?田辺聖子さんの「女の性欲」に学ぶ
最後に、せっかくなので男の性欲に関して考えてみたいと思います。
最近、残念ながら亡くなられてしましましたが、田辺聖子さんが「女は太もも」というエッセイの中で「女の性欲」というのがどういうものなのか説明されていて、それが自分には非常に印象的で今でもよく覚えているのです。
男は一瞬に排泄したらそれで終る性だが、女はじんわり、ゆっくり、ずーっと、ながあく、そろーっと開花していく性であって、つまり、夫をもち、子供を産み、それを育て、世の中へ送り出す、それらすべてが、性なのである。性は、女にあっては、ベッドの中だけじゃなく全てに分散拡大し、とりとめもなく、放恣にひろがっているものである
これを読んだのはもう6年も前になるが、今回ブログを書くにあたって改めてKindleで購入しました。女にとっては性欲とはセックス だけじゃなく、生活全てに性がちりばめられているとのことです。時折、女性の方が男性より性欲が強いと言われるのは、まさしくこういうためだからか、と当時感じた記憶があります。女にも性欲はある!”そして男の性欲みたいに、一ぺん二ぺんの離散集合で、すんじまう男の性とは根本的にちがう。わかったか。”そう書かれています。
ただ、おせいさん(田辺聖子さん)が言うほど、男の性欲も単純じゃない気もするのです。確かに、ただ子孫を増やしたいだけのために手当たり次第に女性を漁っていく男も確実にいるとは思うし、女の性欲よりはわかりやすいかなとも思うのですが、男の性欲がそこまで単純だと、対象は生殖可能な適齢の女性のみとなり、小児性愛(もちろんダメですが)も熟女好きも生まれないと思うのです。男の性欲もそれなりにややこしいからこそ、時折異常なまでの特定の女性に対する執着を見せるのだと思います。その根底にあるものが何なのかは自分にはまだわかりません。考察してみると宣言したものの、おせいさんのようにはうまくまとめることができなかった。悲しい。
女性が考えているほど、男性は下ネタを話していないのかもしれません。少なくとも自分は自分にそういう経験が乏しいため、飲み会での下ネタは苦手だし、それが嫌だから日本にいる時は飲み会を避けていた程です。そして下ネタ好きの男性も、あくまで自分が女性とたくさんセックスしたことがあることを、そしてそう言う知識があることを自慢したいことがメインで、性そのものについて深く掘り下げたい訳ではないと思います。だからこそ、飲み会での性の話はいつも表面的で、生産性がないのだと思います。「初体験はいつ?」とか「経験人数は?」とかはよく話題になりますが、「初オナニーはいつ?」とか「週何回オナニーしているの?」とかは男性同士の飲み会の会話で聞いたことがありません。性というものを考える時、意外とそういうことの方が大切かもしれないのに。
通常男の性欲は、女性や子孫を求める原動力としてうまく機能し、循環していますが、うつ病になると「性欲の減退」だけでなく、「性の循環」がうまくいかなくなるという側面があるのかな?、と自分を見ていて感じます。だから、性欲が自慰行為のみで回ってしまい、それが女性へとうまく循環していかないのです。Twitterで瀬戸さんという方が「うつは言い換えれば「リズムが狂う病気」。」と呟かれていて、自分にはこの説明が妙にしっくりきたのです。「リズム」とか「流れ」とか「サイクル」みたいなものが、性欲も含めて、うつ病になると狂います。
もしかしたら、性に関して喋りづらいだけで、自分と似たような状況に陥っているうつ病の人もいるのかな、と思います。この記事が誰かの参考になれば嬉しいです。